5歳・年長の関わり方と学びの指針|園が大事にしていること(保育所保育指針・幼稚園教育要領)と、家でできること
「年長になったら、家でも何か勉強させたほうがいいのかな」。
そう思ったときに知っておくと少し楽になるのが、園が国の指針で何を大事にしているか、です。保育所保育指針と幼稚園教育要領(認定こども園の要領も同じ考え方です)をもとに、園の学びの土台と、家でできることをまとめました。もとは、わが家のために調べたことです。
このページは、子育て中の一人の親が、わが子のために調べたことをまとめたものです。先生でも、お医者さんでもありません。
国などが公開している資料(出典はページの下にあります)をもとにしています。お子さんの関わり方で気になることがあるときは、園の先生や、お住まいの市区町村の子育ての相談窓口にご相談ください。
まず知っておきたいこと:園の「学び」は、遊びと生活そのものです
小学校には国語・算数といった教科がありますが、園には教科がありません。
幼稚園教育要領の解説では、幼児教育の基本として、次のようなことが書かれています。
- 環境を通して行う教育: 子どもが身のまわりのものや人に関わる中で、体験を通して育つ
- 遊びを通しての総合的な指導: 遊びの中で、心と体のいろいろな側面が関わり合いながら育つ
- 一人一人の発達の特性に応じた指導: その子らしさを損なわないように関わる
園の活動は、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」という5つの領域(視点)で捉えられています。保育所保育指針でも、3歳以上は同じ5領域です。
ただしこの5領域は、子どもが「科目」として学ぶものではなく、先生たちが子どもの育ちを見るための視点です。ブロック遊びひとつにも、体を動かすこと(健康)、友だちと相談すること(人間関係・言葉)、形を考えること(環境)、作ったものを見せること(表現)が、まとめて入っています。
つまり年長の学びは、「座って覚える」より先に、「遊びと生活の中で、まるごと育つ」ことが土台になっています。
国が大事にしている「3つの力」
指針や要領では、園で育みたい力を、次の3つに整理しています。学校教育全体を通して育てる力の、幼児期版です。
- 知識及び技能の基礎: 豊かな体験を通して、感じたり、気づいたり、分かったり、できるようになったりすること
- 思考力、判断力、表現力等の基礎: 気づいたことや、できるようになったことを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりすること
- 学びに向かう力、人間性等: 心情・意欲・態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとすること
むずかしく見えますが、言いかえると「体験する」「考えて試す」「やってみたい気持ち」の3つです。
文字や数を覚えることそのものより、その手前の「気づく・考える・やってみる」を大事にする、という順番が、国の指針の考え方です。
「10の姿」は、こんな姿です
この3つの力が育まれている子どもの、園を修了するころの具体的な姿を示したのが「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(10の姿)です。要領の解説から、短く紹介します。
- 健康な心と体: 見通しをもって行動し、自分で健康で安全な生活をつくり出す
- 自立心: 自分の力で行うために考えたり工夫したりしながら、あきらめずにやり遂げて、自信をもって行動する
- 協同性: 友だちと思いや考えを共有し、共通の目的に向けて協力し、充実感をもってやり遂げる
- 道徳性・規範意識の芽生え: してよいこと・悪いことが分かり、気持ちを調整し、友だちと折り合いを付けながら、きまりをつくったり守ったりする
- 社会生活との関わり: 地域の身近な人と触れ合い、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつ
- 思考力の芽生え: 物の性質や仕組みに気づき、考えたり予想したり工夫したりして、新しい考えを生み出す喜びを味わう
- 自然との関わり・生命尊重: 自然に感動し、身近な動植物をいたわり、大切にする気持ちをもつ
- 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚: 遊びや生活の中で数や形、標識や文字に親しみ、必要を感じて使ってみる
- 言葉による伝え合い: 経験したことや考えたことを言葉で伝え、相手の話を聞いて、伝え合うことを楽しむ
- 豊かな感性と表現: 感じたことや考えたことを自分で表現し、表現する喜びを味わう
ここで大事な注意
要領の解説には、この10の姿について、はっきりとこう書かれています。
- 到達目標ではありません
- すべての子に、同じように見られるものではありません
- 特に5歳児の後半に見られるようになる姿です
「うちの子、まだこの姿が見えない」とチェックするためのものではなく、先生たちが「この子の育ちを、次へどうつなげようか」と考えるときの手がかりです。家でも、同じくらいの距離で眺めるのがちょうどいいと思います。
年長は「架け橋」の時期です
文部科学省は、5歳児から小学1年生の2年間を「架け橋期」として、園と小学校が連携する「幼保小の架け橋プログラム」を進めています。
- 園側の5歳児のカリキュラムを「アプローチカリキュラム」
- 小学校入学当初のカリキュラムを「スタートカリキュラム」
といい、10の姿を手がかりに、園と学校で子どもの育ちを共有します。
ここで知っておきたいのは、幼稚園教育要領が、小学校以降の生活や学習の基盤につながることに配慮しながら、「幼児期にふさわしい生活を通して」考える力や生活の態度の基礎を培う、としていることです。小学校の内容を先にやっておく、という書き方ではありません。
学校の側も、スタートカリキュラムは、園で育ってきた学びを生かして始めるもので、子どもは「ゼロからのスタート」ではない、と説明されています(国立教育政策研究所)。家があせって先取りをしなくても、橋は園と学校の側でもかけてもらえている、ということです。
では、家では何をすればいい?
指針の考え方に沿うと、家での関わりは「教える」より「土台の生活を一緒に楽しむ」に近くなります。全部をやる必要はありません。合いそうなものだけ、どうぞ。
遊ぶ時間を、じゃましない
園の学びの中心は遊びです。家でも、子どもが夢中になっている遊びを、すぐに「勉強」に置きかえなくて大丈夫です。むしろ、たっぷり遊べる時間があることが、指針のいう「体験する・考えて試す」の土台になります。
生活の中で、言葉と数に触れる
10の姿の「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」は、「必要を感じて使ってみる」ことが大事にされています。
- 買い物のときに「3つ取って」
- 看板の文字を一緒に読む
- 料理で「半分に切る」「お皿を5枚並べる」
ドリルでなくても、生活の中に言葉と数の出番はたくさんあります。
話を聞く・絵本を一緒に開く
「言葉による伝え合い」は、経験したことを言葉で伝える場面で育ちます。園で何があったかを聞く時間や、寝る前の絵本は、そのまま指針の方向と重なります。毎日でなくても、できるときで大丈夫です。
「自分でやる」場面を、少しずつ渡す
着替え、片づけ、明日の用意。「自立心」は、しなければならないことを自覚して、自分の力でやり遂げる体験で育ちます。時間がない朝は手伝ってしまっても、それはそれで大丈夫。休みの日など、時間のあるときに渡してみる、くらいで十分です。
先取りは「しなくてはいけないもの」ではありません
ひらがなの読み書きや、たし算の形の学習は、小学校で教科として扱います(詳しくは「入学の準備」の記事に)。
もちろん、子どもが興味をもって「やりたい」と言うなら、それに応えるのは自然なことです。でも、「入学前にやっておかないと困る」というものではない、ということは、国の指針からも言えると思います。
関わり方で迷ったときは
その子に合った関わりは、毎日そばで見ている園の先生が、いちばんよく知っています。
「家で何かしたほうがいいですか」と、園の先生に聞いてみるのは、とてもよい相談だと思います。園での様子と合わせて、その子に合った答えが返ってくるはずです。
子どもの育ちのことで心配が強いときは、「発達で気をつけたいこと」の記事もあわせてどうぞ。気持ちの持ち方については「親の心の持ちよう」の記事に書いています。
わが家のこと
わが家も共働きで、毎日つきっきりで教える時間は取れません。
だから私が作っているのは、すきま時間に流せる学習の歌です。子どもが歌を口ずさんでいるのを聞くと、「関心の芽生え」って、こういうところから始まるのかもしれないな、と思います。
国の指針が大事にしているのは、結局のところ「体験して、考えて、やってみたい気持ち」。家でできることは、そのお手伝いくらいで、ちょうどいいのかもしれません。
このページは、子育て中の一人の親が、わが子のために調べたことをまとめたものです。先生でも、お医者さんでもありません。
国などが公開している資料(下の「出典」)をもとにしています。お子さんの関わり方や園生活のことで気になることがあるときは、園の先生や、お住まいの市区町村の子育ての相談窓口にご相談ください。ほかの相談先は「相談先と使える制度」の記事にまとめています。
出典
- 文部科学省「幼稚園教育要領解説」第1章 幼児教育の基本(育みたい資質・能力と「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」): https://www.mext.go.jp/content/20230309-mxt_youji-000028051_3.pdf
- 厚生労働省「保育所保育指針」(平成29年厚生労働省告示第117号): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450
- 文部科学省「幼保小の架け橋プログラム」: https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/1258019_00002.htm
- 文部科学省「幼稚園教育要領」(平成29年3月)第1章 総則(小学校教育との接続): https://www.mext.go.jp/content/1384661_3_2.pdf
- 国立教育政策研究所「スタートカリキュラム スタートブック」(ゼロからのスタートじゃない): https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/startcurriculum_mini.pdf
- 文部科学省「新幼稚園教育要領のポイント」: https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/044/001/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/28/1394385_003.pdf
